アフガニスタンの女子に教育の保障を(2022年1月1日号)

アフガニスタンの女子に教育の保障を

求められるタリバンとの対話

RAWAがアフガニスタン東部で運営する初等教育学校(2021年9月・RAWA提供)



限定的に再開された女子教育 

2021年8月15日、タリバンによるアフガニスタンの全権掌握から約1カ月が経過した9月17日、教育省が男子の前期・後期中等学校(日本の中学校と高校)の再開を発表。男子と男性教員に、翌日からの通学と通勤を求めた。しかし、同学年の女子については言及がなく、その後もほんの一部の州を除き再開されることなく、現在(2021年12月8日)
に至っている。

なお、初等教育学校(日本の小学校)に関しては、夏休み明けの9月上旬、性別にかかわりなく再開されている。1977年に創設された独立系のフェミニスト団体である「RAWA」(アフガニスタン女性革命協会)が運営し、筆者が共同代表を務める「RAWAと連帯する会」が財政支援をする初等教育学校(アフガニスタン東部)も無事に再開され、通学するすべての子どもの顔写真も現地から届いている。

この学校は、タリバンが好ましく思わない共学制だ。しかも、女性の人権を蹂躙してきたタリバンを含む国内の諸勢力や外国軍の支配に反対してきたRAWAが運営している。そのため、学校再開にあたっては、安全性確保のために、RAWAのメンバーだった校長を、地元の男性に変更せざるを得なかった。


タリバンと「家父長的規範」


アフガニスタンでは、2001年の米英軍などの攻撃以後に始まった国際社会の復興支援を受けながら、教育制度の整備が進められた。その中で、義務教育は初等教育学校から前期中等学校までの9学年とされた。

国際復興支援においては、教育制度の整備は重要課題の一つであった。その理由は、次の通りである。


①1970年代後半から20年以上もの間、外国軍の侵攻・駐留、内戦による戦乱が続き、またそれに伴う難民化により、教育を受ける機会を失った人々が多数いる。

②旧タリバン政権(1996年〜2001年)が女子の教育を大幅に制限した。

③家父長的規範の影響で、「女子に教育は必要ない。女子や女性は家にいるべき」と考える家族が民族にかかわりなく多い。

こうしたことから、総じて教育を受けた割合(とりわけ女性の識字率)が低かったためである。


8月15日以降のアフガン社会で、女子の前期・後期中等教育が再開されていない現状は、旧タリバン政権時代を思い起こさせる。女子の通学手段を含む安全な教育環境が整っていない、ということが当時の制限の理由であったが、現在も同様の理由が用いられている。

タリバンのこうした考え方は、女子や女性の教育を否定しないイスラムの「厳格」な解釈に基づくものではない。タリバンは主にアフガニスタンの最大民族パシュトゥン人により構成されており、女子の教育に否定的であったり、留保をつけたりする考え方は、パシュトゥン人の間で根強く残っている家父長的規範(先述の③)を反映してのことである。

都市部では、一定以上の人々が、性別や社会階層にかかわりなく、女子の学校の再開を強く望んでいる一方、国土の大部分である農村では、タリバンと同様の考え方に違和感を持たずに暮らしている人々が多数いる。従って、居住地に女子の学校があり、近い将来再開されたとしても、親が娘を通学させるとは限らないのである。


ジェンダー視点から見た学校教育の多重な意義



学校教育は、読み書きの能力や知識を身に着けるためだけにあるわけではない。通学先で他の子どもと学び、遊びや会話を通して交流することで、子どもは家族以外の人と人間関係を築き、情報交換をする。通学できないと、こうした機会を失う。また、交流を通して子どもは将来の夢を広げ、そのための教育をさらに受けたいと思うこともある。それができない状態だと、希望を失いかねず、大きなストレスを抱えることにもなる。これは、アフガニスタンであろうと日本であろうと変わりはない。

アフガン社会の性別役割分担の文脈からもう少し考えると、前期・後期中等学校で女子が教育を受けられないということは、家の外に出る機会が圧倒的に減るだけでなく、学校にいる間は解放される家事負担が格段に増加することを意味する。また、娘の教育に積極的でなく、若い年齢で結婚させることが好ましいと思っている家族であれば、娘の結婚相手を探そうとするだろう。その結果、早婚・児童婚が促進されることになる。

このように、ジェンダー視点から学校教育の意義をとらえようとすると、多角的な問題が見えてくる。そのことをわかっているからこそ、RAWAは教育活動に大きな力を注いできた。

女子の教育へのアクセスを担保するためには、各国がタリバンとの対話を通して再開を促していく必要がある。同時に、既にRAWAメンバーを含む様々なアフガン女性が訴えているように、アフガニスタン国内での継続した働きかけを通して、女子の教育に関する意識を変革していくことが求められる。

私たちは、アフガン女性が活動を継続できるよう、連帯の意思を示し、寄り添うための一歩を踏み出さなければならないのではないか。


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