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辺野古新基地建設―遺骨の混じった土砂を使うことは許されない(2022年4月25日)

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  年11月、玉城デニー沖縄県知事は、辺野古新基地建設に関わる設計変更申請を「不承認」としました。会見では「遺骨がいまだ残されている場所から採取された土砂が、基地建設の埋め立て工事に用いられる可能性が示されており、人道上、許されない」とコメントしています。 昨年5月、沖縄県は、遺骨が多く残る南部地域の鉱山開発をめぐり、業者に対して遺骨の有無を確認することを求める措置命令を出しました。 業者側はこれを不服として国の公害調整委員会に取消し請求を行ない、今年3月24日、その2回目の審理が行なわれました。 同日、審理終了後に院内集会が開かれ、遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんが、「辺野古埋め立て工事の今後と沖縄南部地区の土砂問題」について講演(オンライン)。 具志堅さんは「南部遺骨土砂問題」は、単に遺骨だけの問題ではない。骨を取り除いたら使っても良いというものでもない。血がしみ込んだ土、戦没者の叫びを聞かなければ、沖縄は再び戦場になると繰り返し訴えてきました。 沖縄の風景は、旅行で訪れる人たちから見たら「きれいな海」でしょう。しかし同じ海でも、沖縄の人たちが見ると、悲しい風景でもあるのです。悲しい気持ちも、苦しい気持ちも含めて風景。だから土砂を採取した後、植樹したところで元通りにはならないと具志堅さんはいいます。 さらに、沖縄には風葬(遺体を棺に入れて洞窟や崖下に放置し、自然に風化してから洗骨する昔ながらの埋葬方法)という習慣があり、その骨も埋まっていることを考えれば、沖縄の祖先に対する冒とくであると訴えます。 今、南西諸島にはミサイル基地が作られ、台湾有事を想定して自衛隊とアメリカが共同訓練を行なっています。アメリカは「中国が攻撃してきたら一番最初に犠牲になるのは米軍空母と沖縄の住民」とはっきりと言っています。 集会では、遺骨が含まれる土砂を新基地建設に使わせないよう、全国で200以上の自治体が意見書を採択したと報告されました。 4月8日、国土交通省は沖縄県の不承認処分を取り消す裁決を下し、設計変更を20 日までに承認するよう是正勧告をしました。国は裁判に持ち込む見込みです。 どんな手段を使っても、民意を無視し強行される新基地建設。「南部遺骨土砂問題」は、「復帰」50年の沖縄を象徴する問題だと思います。

入管問題を考える なぜ在留資格が与えられないのか(2022年4月25日号)

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  3月6日、全国8カ所で開催された「3・6ウィシュマさん一周忌全国一斉追悼アクション」。東京では、ウィシュマさんの死の真相究明や長期収容の反対などを訴え、300人を超える市民が東京出入国在留管理局(東京入管)の周囲を行進するデモに参加。この後、行なわれた集会での発言者の1人が「夫(仮放免者)の在留資格を求める日本人配偶者の会」(配偶者の会)のなおみさんだった。 なおみさんは17年前に出会ったスリランカ出身のナビンさんと2016年の秋に結婚。婚姻届が役所で受理されているにもかかわらず、入管は彼の配偶者ビザを出さないまま、既に5年半が過ぎている。入管や法務省、政府の対応は、憲法13条と24条が保障する幸福追求権や婚姻の自由と照らし合わせて問題ないのか。なおみさんとナビンさんが置かれた状況から考えてみたい。 倒産した学校に「相談して」 2人が出会ったのは2005年。ナビンさんは日本で就職することを目指し、日本語学校の留学生として来日していた。ところが、通っていた学校が倒産、閉校するという事態に巻き込まれてしまう。 日本語力が十分でない中、学生ビザが切れる前になんとかしなければと、入管に足を運んだ彼への職員の対応は「学校に相談してください」というものだった。入管に相談に行ったのは、学校が閉鎖してしまったからだ。にも関わらず、留学生のためのセーフティネットすらない。日本の制度不全の問題は、こんなところにも表れている。 こうしたトラブルの末、超過滞在になってしまったナビンさんはこれまで3度、入管に収容されている。 「2度目の収容は明らかに入管のミスによるものでした。入管は自分たちのミスを認めませんが、さすがにこの収容はすぐに解かなければと思ったのでしょう。彼は『早く(仮放免の)申請書を出すように』といわれ、この時は2カ月で仮放免になりました。この頃(2016年)には、既に2人の間で結婚の意思が固まっていたので、弁護士の先生と私が保証人になって、仮放免が認められたその日から、私たちは一緒に暮らし始めました」。 ナビンさんが仮放免中のため、婚姻届を提出した役所の窓口は、担当省庁である法務局に連絡。インタビューや調査などを受けたものの、婚姻届は無事、受理された。ところがその4カ月後、ナビンさんは再々収容されてしまう。 収容で20キロ近く減った体重 その時の状況につ

武力でなく戦争させない外交を(2022年4月25日号)

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(弁護士) 杉浦ひとみ ▼国民が待望した「平和憲法」 2月24日、ロシアからの一方的な武力侵攻を受けたウクライナのゼレンスキー大統領の「祖国を守る」「最後まで戦い続ける」の言葉に、「そうだ!」と自然に呼応したくなる気持ちは否定できない。「戦わない」という日本の憲法9条は、現実的ではないのか? との思いが頭をよぎったのではないだろうか。 しかし、この日本国憲法は、1941年12月の真珠湾攻撃を始期と考えても、1945年8月15日の敗戦までの約3年半の悲惨な戦争を経て、日本国民が心底待望したものだった。戦争体験のない私たちは、実はこの『待望』の念を、これまで実感したことがなかった。 この1カ月余のウクライナの状況は、戦争が何であるかを私たちにリアルに示している。 何千人もの市民の犠牲者を出し、愛する人や家、コミュニティも平穏も失った多くの人々が、泣き叫び、恐怖に震え、また悲壮な緊張感のもと避難している。食卓でその映像を見ている私たちは、その痛みと不安を、今一度「自分ごと」として想像すべきだ。 体と心に消えない傷を負った人々と、親を失い将来を黒塗りにされた孤児たちの悲劇は、目には見えず全土を覆い尽くし、永く堆積していく。それは、東京大空襲訴訟に関わり、戦後70年以上苦しみ続けた原告らと多数出会ってきた経験から言えることである。 ▼犠牲になるのは誰か 他方、ロシア兵はどうだろう。迎え撃つ敵の中に乗り込む不安や恐怖、指揮官を大勢失い、経験の少ない兵士が混乱の中にいるという。ニュースによれば、チェルノブイリ原発付近に塹壕を掘り、兵士が被ばく症状を呈したとも聞く。 IAEA(国際原子力機関)が3月31日に「原発を占拠していたロシア軍が、原発の管理をウクライナ側に戻し、原発から撤退している」旨の声明を出しているというから、信憑性がある。戦争の現場は、混乱しているのである。 戦争下、兵士は使い捨てのコマだ。太平洋戦争中、大勢の日本の若者が、兵站の保障のない戦で、飢餓のために命を落とし、片道の燃料で特攻に向かわされた。その戦いと、どう違うのか。このような形で子どもを失う親の無念は、敵も味方もない。映像で見る破壊された建物は、人の心や社会の破壊のだ。 この悲劇は、実は、アメリカやNATOなどが攻め入ったアフガニスタンでも、イラクでも起こっていたが、私たちは情報の偏りで

優生保護法被害国家賠償請求訴訟ー東京高裁勝訴も国が上告 早期解決を求める(2022年4月10日号)

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  「正義と公平の裁判を、という願いが叶いました。64年もの苦しみに向き合ってくれた裁判官がいたのが嬉しい。感無量で、言葉になりません」。  北三郎さん(活動名・78歳)の瞳から大粒の涙が溢れた。  国による戦後最大の人権侵害、優生保護法下での強制不妊手術。2万5000人いる被害者の8割は女性だ。3月11日、東京高裁は賠償請求を退けた一審判決を変更し、旧法を違憲と判断。国に対し1500万円の賠償を命じた。2月の大阪高裁判決に続き、国への賠償命令は2件目。20年経つと、損害賠償の請求権が消滅する民法の「除斥期間」適用の是非が争点だった。 * 北さんは、児童福祉施設に入所中の14歳の時、説明されないまま不妊手術をされ、亡き妻にも死の間際まで打ち明けられなかった。手術から60年以上経った2018年1月、仙台の提訴を報道で見て、自分が受けた手術が優生保護法による国策だと初めて知り「多くの被害者に声を上げて欲しい」と同年5月、東京地裁に提訴。 一審では、除斥期間を理由に請求を棄却された。だが高裁は、除斥期間の規定をそのまま適用することを「著しく正義・公平に反する」と断じ、被害者を救済する「一時金支給法」が施行された2019年4月から5年間は賠償請求できるとした(大阪高裁より救済範囲を拡大)。 平田豊裁判長は「手術により子をもうけることのできない身体にされたが決して人としての価値が低くなったものでも、幸福になる権利を失ったわけでもありません。今後も幸せに過ごして欲しい」と異例の所感を述べた。 「北さん、おめでとう!」という声を皮切りに、傍聴席から大きな拍手がわき起こった。感動と希望の光に満ち溢れた歴史的判決。誰もがたくさんの勇気をもらった。 * 原告と全国弁護団は、国が上告しないよう懸命に要請を続けた。3月17日には「東京判決を受けての緊急院内集会」を開催し、国会議員・報道を含む381人が参加。23日の厚労省前集会「上告するな!全面解決に踏み出せ!」には、全国の原告・支援者弁護団ら約130人が結集した。  3月24日、国は上告。 だが、松野博一官房長官は会見で「一時金支給法(320万円)を超える金額が認容されたことを重く受け止め、一時金の水準等を含む今度のあり方について国会と相談し、議論の上、対応を検討したい」と述べた。 これを受け、「上告はあったが政府

入管問題を考える 点滴で栄養ー入院も仮放免も認められず(2022年4月10日号)

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  収容がこれ以上、長引いて大丈夫なのか。そう懸念される被収容者は、前回紹介したネパール人のAさんだけではない。 今、東京出入国在留管理局(東京入管)には、食べても嘔吐してしまうため、80日以上、点滴でギリギリの栄養を摂っているにも関わらず、入院も仮放免も認められず、車椅子で過ごすスリランカ人男性がいる。 こうした状況を危惧して入管問題に取り組むのが、石川大我参議院議員だ。2001年、LGBT支援のつながりから入管問題に関わったという石川さんに、議員会館で話を聞いた。 フリーライター  塚田恭子 80回を超えた点滴 「これを見てください」。 石川さんはまず、東京入管に収容されているスリランカ人男性ジャヤンタさんが記録した体重推移のグラフをテーブルの上に置いた。 ジャヤンタさんは2021年2月、7月と、収容施設内で2度、新型コロナに感染。10月には、彼を車椅子から引き離そうとする職員から身を守ろうとして転倒し、1時間半、足を車椅子に挟まれたうえ、職員から暴行を受け、顔や足などに怪我を負った。 この事件を知った石川さんら国会議員が入管に申し入れを行ない、ジャヤンタさんは11月に仮放免が認められたものの、わずか2週間で再収容されてしまう。 身体のために食べなければ。本人もそう思いつつ、食べると吐いてしまうため、点滴でエネルギーを補給する状態が続いている。 「2月22日の面会後、受け取ったのがこの体重のグラフです。点滴はこの日で79回目、すでに80回を超えています。血管が固くなり、針を刺す場所もあちこち変えているのに、『この状況でも収容を続けるのですか?』と尋ねても、東京入管の石岡局長は『大丈夫です』といいます。逆に局長は『自分が食べられるといったバナナやゼリーを出しても食べないし、血液検査も受けてくれない。石川先生からも食事を摂るよう、彼にいってやってください』というのです」。 食べられない青いバナナ 医師でもある阿部知子議員らとともに1月にジャヤンタさんに面会した際、仮放免中の食事を聞き取った石川さんは、フルーツなど身体に負担の少ないものを出してはどうかと申し入れをした。これを受けて、入管はバナナを出したのだろう。 だが後日、自由時間に電話をしてきたジャヤンタさんに確認すると、出されたのは青くて固いバナナで、とても食べられなかったと聞かされたという

「戦争しない国」であり続けるために(2022年4月10日)

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法政大学名誉教授  田中 優子   「火事場泥棒改憲主義」 ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』という本がある。戦争や災害が起こった時に、その危機に乗じて一気に経済改革を行なうことだ。公共部門を民営化し、復興と称して 企業が急拡大するのである。「惨事便乗型資本主義」と呼ばれるが、「火事場泥棒資本主義」ともいう。 COVID〞19に乗じて「緊急事態条項」を決めようとしたり、ウクライナに乗じて9条改憲と核共有を口にしたりするのも、ショック・ドクトリンだ。「火事場泥棒改憲主義」と名付けても良い。 そもそもCOVID — 19も災害も、それぞれの実情に沿って対策を考えた方が効果的である。国の命令で統一した行動を取ることが、災害にふさわしいとは限らないのである。ちなみに「緊急事態」とされた時には、国会の議決を経ない軍事目的の増税・戦時予算の編成が可能となり、法律に基づかない政令によって、自治体の港湾・空港管理権、病院の軍事優先・独占使用などが可能となるという。 2018年に自民党は、「自民党憲法改正草案」の中から優先的な4項目の「条文イメージ」なるものを発表した。この緊急事態条項のほか、自衛隊に関すること、合区解消・地方公共団体、教育充実である。この4項目を出してきたことの目的は、教育充実のように誰もが望むことを看板にして、実は9条改変と緊急事態条項を通すことではないか、と私は思っている。 実際に外国が攻めてきても、現行の憲法下で国を守ることはできる。自衛隊法は、自衛隊が「我が国の平和と独立を守り、国の安全を保つため、我が国を防衛することを主たる任務とし」と、国内における任務を定めている。憲法9条は自衛権を認めており、ウクライナ軍がそうしているように、自衛隊法に基づいて国内で任務にあたることができるのである。 条文イメージの9条改正は、現行の9条の後に「第九条の二」として、「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する」を付け加える、というものだ。 自衛隊法とこの条文イメージには、違いが1つある。自衛隊法は「国の安全を保つため、我が国を防衛する」とあるが、条文イメージは「国及び国民