脅かされる地方自治とプライバシー権  重要土地調査規制法を廃止に!(2022年2月10日号)

松戸市議 岡本 ゆうこ

 


全国自治体議員団の活動

2021年6月16日未明、国会で強行採決された土地規制法(重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律)。これは、政府の説明のような、基地や原発の周辺の土地の外資による取得を禁止するものではなく、基地や原発から被害を受けている住民を敵視し、監視しようとする法律です。

国民的議論を踏まえる上でも、国民から一番近い存在である私たち自治体議員が一丸となり、「廃止」の声を大きくあげることが必要だと考え、超党派の「土地規制法を廃止にする全国自治体議員団」(約150人が賛同)の発起人となり、廃止をめざす地方自治体議員の一人として活動しています。まだ「法案」の段階で国会審議がされていた時に、立憲民主党が衆議院の内閣委員会で修正案を出すと報道されたことがきっかけでした。その頃は国民投票法改正案と重なったこともあり、国会の動きを注視していました。


全ての人が監視の当事者


現在、内閣府内閣官房重要土地等調査法施行準備室では、今年9月の施行に向けて、土地等利用状況審議会の設置や基本方針案の検討が進められていますが、条文の中で、私が最も危険だと考えるのは第22条です。

ここには、地方自治体や関係行政機関の長が内閣総理大臣から求められる協力について定められています。内閣総理大臣が必要と判断すれば、自治体等に資料の提供、意見の開陳、その他の協力を求めることができるようになるというものです。

例えば、市町村長に対して「○○さんの住民基本台帳を提出してください」と命じることができます。条文には「その他の協力」も幅広く規定されており、自治体に民家への立ち入り調査を行なわせることもできるようになるでしょう。これは、国と地方の対等な関係を崩してしまうもので、地方自治の本旨に反します。

そもそも、この法律自体が憲法に反する内容であり、思想良心の自由や表現の自由、プライバシー権等の侵害にもなります。そして、住民を監視するには、対象者の身近な友人や知人から情報を収集する必要があり、住民同士が監視し合い、分断されてしまうような状況を生む恐れがあります。

松戸市にも松戸駐屯地があり、注視区域に指定されることは間違いないでしょう。対象となる生活関連施設(重要インフラ)がどこになるかもわかりません。基本方針はこれから内閣総理大臣が定めることになっており、松戸駅周辺も指定される可能性がないとは言い切れません。基地や原発周辺地域のみならず、日本全国が対象であり、一人ひとりが当事者意識を持って挑まなければならない、本当に恐ろしい法律だと思っています。


危険性を広め、声をあげる


しかし、この法律の危険性はまだまだ知られておらず、残念ながら自治体議員の認識も不十分です。まずは知ってもらい、問題点を広めていく必要があります。議会への請願や陳情を含めた運動を強め、市民から自治体に対し、意見をどんどん挙げてほしいと思います。

2021年8月3日に行なった市民と国会議員のヒアリングの段階では、基本方針について「パブリックコメントにかける予定はない」とのことでしたが、12月2日のヒアリングでは、「パブリックコメントの実施も含めて検討している」と前進しました。時間は限られていますが、引き続き、強く要望していきたいと思います。

今後、基本方針の策定に向け、「自治体の意見を聞く」という国会答弁や、政府交渉での回答、さらには本法律が衆参両院で可決された際に採択された付帯決議を活用しての請願、陳情の提出が望ましいと考えています。付帯決議の中には、「注視区域及び特別注視区域の指定に当たっては、あらかじめ当該区域に属する地方公共団体の意見を聴取する旨を基本方針において定めること」とあるのです。


皆さんがお住まいの地方議会で、自治体の意見が反映されるよう強く求める内容が採択される働きかけが必要です。私たちは市民の皆さんと一番近い存在の自治体議員ですから、市民の皆さんと一丸となって取り組んでいかなければいけないと、強く訴えていきたいです。法の廃止に向けて、力を合わせましょう。

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