優生保護法被害国家賠償請求訴訟ー東京高裁勝訴も国が上告 早期解決を求める(2022年4月10日号)

 「正義と公平の裁判を、という願いが叶いました。64年もの苦しみに向き合ってくれた裁判官がいたのが嬉しい。感無量で、言葉になりません」。 

北三郎さん(活動名・78歳)の瞳から大粒の涙が溢れた。 

国による戦後最大の人権侵害、優生保護法下での強制不妊手術。2万5000人いる被害者の8割は女性だ。3月11日、東京高裁は賠償請求を退けた一審判決を変更し、旧法を違憲と判断。国に対し1500万円の賠償を命じた。2月の大阪高裁判決に続き、国への賠償命令は2件目。20年経つと、損害賠償の請求権が消滅する民法の「除斥期間」適用の是非が争点だった。

北さんは、児童福祉施設に入所中の14歳の時、説明されないまま不妊手術をされ、亡き妻にも死の間際まで打ち明けられなかった。手術から60年以上経った2018年1月、仙台の提訴を報道で見て、自分が受けた手術が優生保護法による国策だと初めて知り「多くの被害者に声を上げて欲しい」と同年5月、東京地裁に提訴。

一審では、除斥期間を理由に請求を棄却された。だが高裁は、除斥期間の規定をそのまま適用することを「著しく正義・公平に反する」と断じ、被害者を救済する「一時金支給法」が施行された2019年4月から5年間は賠償請求できるとした(大阪高裁より救済範囲を拡大)。


平田豊裁判長は「手術により子をもうけることのできない身体にされたが決して人としての価値が低くなったものでも、幸福になる権利を失ったわけでもありません。今後も幸せに過ごして欲しい」と異例の所感を述べた。

「北さん、おめでとう!」という声を皮切りに、傍聴席から大きな拍手がわき起こった。感動と希望の光に満ち溢れた歴史的判決。誰もがたくさんの勇気をもらった。

原告と全国弁護団は、国が上告しないよう懸命に要請を続けた。3月17日には「東京判決を受けての緊急院内集会」を開催し、国会議員・報道を含む381人が参加。23日の厚労省前集会「上告するな!全面解決に踏み出せ!」には、全国の原告・支援者弁護団ら約130人が結集した。 

3月24日、国は上告。

だが、松野博一官房長官は会見で「一時金支給法(320万円)を超える金額が認容されたことを重く受け止め、一時金の水準等を含む今度のあり方について国会と相談し、議論の上、対応を検討したい」と述べた。

これを受け、「上告はあったが政府は高裁判決を重く受け止め、前に進んでいるように感じる。ロビー活動でも与野党の議員と話して見えてきたものがある。引き続き早期解決に向けて頑張りましょう!」と藤木和子弁護士はコメント。

被害者に幸せな晩年が訪れるよう、国に対して一刻も早い全面救済を求める。いまからが正念場だ。


このブログの人気の投稿

守られぬ患者の安全ー聖路加国際病院で牧師が加害

ブログ移行中です(2023年10月23日)

311甲状腺がん裁判④ 「私たちは今、匿名で闘っていますが、 一人ひとりに名前があります」