経済安保法案ー現代の「国家総動員法」を通すな(2022年5月10日号)

 4月12日、緊急院内集会「現代の『国家総動員法』を許さない!」が開催された(経済安保法案を懸念するキャンペーン主催)。

緊急院内集会「現代の『国家総動員法』を許さない!」(4月12日)


国会で現在審議中の「経済安全保障推進法案」(以下経済安保法案)は、岸田政権の目玉政策。しかし、半導体供給の確保や先端技術の保護を目的とするとしながら、実際は企業の経済活動や技術開発、学術研究を軍事政策の下に置こうとする危険な法案だ。集会内容を中心に、その問題点を紹介する。


■院内集会


海渡雄一弁護士は「中国・ロシアを仮想敵国とみなし、経済交流を制限するものであり、経済法ではなく軍事法。『現代の国家総動員法』ともいえる法案だ」と指摘する。

法案の柱は①特定重要物資の安定的供給の強化、②外部からの攻撃に備えた重要設備の導入・維持管理委託への事前審査、③先端重要技術の官民協力、④原子力・武器等の技術の特許非公開の4本。

経済安保法案の有識者会議のメンバーで、「安全保障の根幹は科学技術」と言い切る兼原信克氏(元内閣官房副長官補)は、最も重要なのは、③の官民技術協力だとしている。彼は、戦争協力への反省から「軍事研究はしない」姿勢を貫いてきた日本学術会議を「日本の安全保障の足かせ」と酷評する人物だ。


法案は既に衆議院を通過し、参議院に移っているが、衆議院の内閣府委員会で参考人を務めた井原聰さん(東北大学名誉教授)は「この法案は枠組みだけで、内容が示されていない。138カ所も政府が政令・省令で決めることになっており、白紙委任の提案。国会軽視だ」と指摘。重要物資・重要業種の指定は政府に一任され、事業者への統制が広範囲に及ぶ可能性があり、それが官への忖度や癒着・従属を生むことになると話した。

さらに「経済安全保障の定義も有事の定義もなく、政府の恣意的な運用を可能にするもので、研究者や企業を軍事研究、生産に囲い込む法案。秘密指定されると、研究者は研究発表も口外も禁じられる。軍事研究を拒否して研究者が官民協議会から離脱できるかも不明で、ユネスコの『良心に従って当該事業から身を引く権利』とも矛盾する」と訴え、平和憲法下で軍事研究を行なうこと自体が憲法違反だと語気を強めた。


■参議院内閣委員会


4月19日の参議院内閣委員会では、法案について福島みずほ参議院議員が質問した。先述の集会で井原さんが言及した官民協議会のことにも触れている(以下一部抜粋、▼は政府答弁)。

*  *


官民協議会は、軍事研究の一大拠点が作られるのではないかと危惧される。協議会はどのような構成で、どのような役割を果たすのか。研究開発大臣まで置くが、防衛省も参加し、いずれ軍事研究になる可能性が問題だ。協議会のもとにシンクタンクが作られるというが、ここで学位授与を行なうという提案もあると聞く。それでは学問の独立性が脅かされ、若い技術者を国が囲い込むことになる。学位授与は、決して許されない。

有識者会議の兼原氏は日本の科学界が平和主義で軍事研究をしないことを問題にしているが、軍事研究は憲法違反だ。軍事研究に転用させない歯止めを条文に盛り込むべきだ。

条文では「外部からの攻撃」に備え基幹インフラや重要設備に関する委託を「外部(外国)に過度に依存」しないように事前に国が審査するため、企業に「導入計画」の提出を義務付けている。「外部」とはどこか? 報告義務は中小企業も対象か?

▼特定の国は想定していないし、中小企業を対象に指定することは基本的には考えていない。

中小企業を除外すると条文で担保されていないことが問題。法案提出前から、大川原化工機事件のように、中小企業でも不当な嫌疑がかけられる事件が起きており、法案が通れば企業活動や個人の権利を侵害する可能性が高い。特許非公開制度の導入は、戦前の秘密特許とどう違うのか?

▼戦前は国の軍事要請を満たすためだったが、本法案は、国家国民の安全のためだから違う。

*  *


4月22日現在、参議院での審議が続いているが、国民にこの法案の危険性がほとんど知られていないことも問題だ。

「先端技術を保護する」どころか、国が事前に「審査」(=監視)することで多様性ある企業活動を萎縮・停滞させることは間違いないだろう。「この法案は日本経済の没落の引き金を引く」と福島議員も指摘している。

先述の井原さんによれば、「課題解決型の技術開発」として軍事研究者に手厚い予算がつけられるという(5000億円が既に決定)。税金は、私たち国民の暮らしの安全保障にこそ使うべきではないのか。まだ時間はある。世論を高め、経済安保法案を廃案にさせよう。

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