問題解決を目指して―広がる被収容者支援の輪(2022年5月25日号)





フリーライター 塚田恭子


ここ数年、入管の被収容者の人たちへの支援活動の裾野が広がり始めている。収容施設内で制圧を受けて怪我を負い、医療放置の末に体調を崩す被収容者。帰国できない事情を抱える人にも認められない、厳しい難民認定の基準。外国の人たちを安い労働力としか見ていない国の姿勢が透けて見える技能実習制度。こうした現状をおかしいと感じる人たちが、それぞれのスタンスで支援に関わっている。

星野恭子さんと杉山聖子さんは、2008年に結成された外国人支援団体「BОND(バンド)」の社会人メンバーだ。現在、在籍者が80人を超える同団体で、2人は被収容者との面会やデモ活動をしている。

「まずは現状を知ってほしいです。どうすればこの問題に関心を寄せてもらえるかは本当に課題ですね」と話す彼女たちは、どんな思いで活動に取り組んでいるのだろうか。

手足を動かして支援したい

高校卒業後、日本でいくつかの仕事を経験した後、アメリカの大学に留学した星野さん。大学院を経て、日系企業に就職した彼女は2020年11月に帰国するまで20年以上、アメリカで暮らしていた。だが、仕事でキャリアを重ねるにつれ、もっと社会でできることがあるのではと、支援活動に関心が向かったという。

「ニューヨークでホームレスの人にご飯代ほどのお金をわたすと、God bless youと返されるんです。冬場、寒さの厳しいニューヨークで、見ず知らずの私に『神のご加護を』といってくれる。助けたつもりの自分が、その言葉に逆に助けられて。私は今までやりたいことをやってきて、ある程度、出世もしたのだから、これからは余剰をシェアすればいいのではないか。それまでもフォスターペアレントになったりしていましたが、寄付だけでなく、自分の手足を動かして、支援に関わりたいと思ったんです」。

星野さんがBОNDに参加したのは、翻訳・通訳のボランティアを募集していたからで、最初は日本の入管事情を知らなかったという。

「メンバーになると、入管問題を学ぶ機会や面会研修があります。慣れるまでは経験者とペアで行くので、『こういうふうに話を聞くんだ』と理解していきましたが、それでも最初の面会はやはり緊張しました」。

BОNDでは、中の状況を伝えるため、被収容者の話を聞く面会活動を重視している。週に1回、東京出入国在留管理局(東京入管)に足を運んでいる星野さんは「今年はできるだけ多く、入管に申し入れをしたいと思っています」と話す。

何が起きているのか把握

社会福祉士、精神保健福祉士の杉山さんは、2018年の夏頃から、BОNDに参加している。

「当時、精神保健福祉士の資格を取る勉強をしていました。精神疾患のある人は、国策により、長い人は何十年も精神病院に収容されています。その頃、入管のことを知ったのですが、国によって隔離されることの根本にある考えや構造には、重なる点があるなと思って。入管のことをよく知ろうと難民支援協会の養成講座に通い、収容問題への関心から、BONDに参加しました」。

コロナ禍以前、東京入管には女性を含めて425人の収容者がいた(2019年6月末時点)。同ブロックの被収容者なら、1度に3人に会うことができたという。

「初めて面会した若いクルドの男性のメモを、今も見返すんです。在日10年、日本の女性と結婚したばかりで収容された彼は怒っていました。ちょうど特定活動という在留資格の話が出ていた頃で、『私たちをここから出して就労を認めれば、税金も納め、国にも貢献できるのに、日本は新たな資格で外国人を入れようとしている。政府は日本語ができて、働ける私たちの存在を全く無視している。この中にはHuman Rightsなどないことを、外の人に伝えてほしい』と、彼はそういいました」。

収容施設内で起きていることを伝えるため、杉山さんも週に1度、面会を続けている。ブロック内のことや他者にも目が向いていて、支援者と対話できる人に中の状況を尋ね、被収容者同士をつないでゆく。

「食事や医療、処遇などの問題も、入管にきちんと申し入れができるように、客観的な事実を把握することを心がけています」。

より開かれた活動に

4月に杉山さんの面会に同席させてもらった。この日、参加したメンバーは学生と社会人各2名。たまたま全員女性で、英語が堪能な人も多く、日本語の問題で意思疎通が難しかった被収容者への聞き取りが進んだようだった。

入管問題に限らず、社会運動には敷居の高さが伴う。何かを、誰かを強い口調で糾弾するだけでは、特殊な人の特殊な運動になってしまい、世間の共感を得ることは難しい。

多くの人に問題を知ってもらうために大切なのは、問題意識を持った人が躊躇せずに一歩踏み出せる、開かれた活動にすることだろう。

「彼らがいるから、30年後も日本は大丈夫だと、そう思える学生たちといるのがとても楽しいんです」(星野さん)。

「活動を通していろいろな方と出会いますが、それぞれ関わり方が違うのが興味深いです」(杉山さん)。

してたやすくはない活動に前向きに取り組む。そんな支援者の輪が広がり、社会の目が向くことが、入の問題改善へとつながるのだろう。

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