【入管問題を考える】 親子それぞれのスタイルで支援を続ける(2022年6月25日号)


フリーライター 塚田 恭子


放免を申請する被収容者にとって、住所、保証金とともに不可欠なのが保証人。だが、伴う責任は大きく、引き受ける人は決して多くはない。そんな中、クリスチャンの知人から、これまで多くの被収容者の保証人を務めてきた人がいると聞き、2020年にお会いしたのが宮島牧人牧師だった。その時に「ある精神科の医師が『被収容者にとって何よりの処方箋は、仮放免が許可されることです』といいましたが、私もその通りだと思います」と語った宮島牧師は、これまで200人以上の保証人になっている。

最近は大学等で話をする機会も増えているという宮島牧師は「2021年の入管法改正案の廃案は、学生主導の反対運動が世論を動かした面もあったと思います。今、入管問題について、学生の意識の高まりを感じています」と話す。

若者が入管問題を訴える。その流れを作った1人が、当時高校生だった宮島ヨハナさんだ。2009年から被収容者への面会を続け、仮放免者を支える宮島牧師と、卒業課題を機にこの問題に取り組んだヨハナさん。親子それぞれの入管問題との向き合い方を紹介したい。


支援者どうしの連帯感


昨年春、初めてデモを企画し、アクションを起こしたヨハナさん。

「もう1年経ったと思えないほど、いろいろありました。報道では、私が1人で声をあげたように見えたかもしれませんが、移住連やFREE USHIKUの方たちのサポートも大きかったんです。入管問題は関わる人たちの間に連帯感があります。人権侵害の問題を解決しようという思いが、ウィシュマさんの真相究明のアクションにもつながりました」。

大学入学後は、支援団体IRIS(アイリス)を創設。半年余り経つが、学内での認知度は上がっているという。

「新入生に私たちの活動に関心を持ってもらえるのは嬉しいことです。でも、ウィシュマさんの事件は氷山の一角で、今も施設内で人権侵害が起きていることも知ってほしいと思います。IRISの活動にはいくつかの柱があります。すぐにも必要な食糧支援、入管での面会活動、オンラインでのイベント企画。制度の改正に向けて、署名やデモ活動、議員やメディアへの働きかけも行なっています」。

ヨハナさんをはじめとするこうした学生の活動について、宮島牧師は「私が大学生の時はバイトをして、興味のあることばかりしていたことを思うと、本当に頼もしいです。ただ、相手は国という大きなもの。ゴールの見えない重い問題なので、バランスを取りながら活動してほしいと思いますね」という。


入管コミュニティ


2人で入管問題を話すことはありますかと尋ねると、「私からはあまり話しませんね。彼女が興味ありそうな新聞記事を机に置いておいたり、講演会の情報を教えたりしますが、あくまで私個人の活動で、家族を巻き込んではこなかったので」と、宮島牧師。

一方、仮放免者に英語を教えてもらうこと等はあったものの、入管で起きている人権侵害の実情は知らずにいたヨハナさんは「お父さんはずっと関わってきたのに、今までなぜ話してくれなかったのかと思いました」という。

だが、自分から話していたら、逆に嫌がっていたかもしれないし、大切なのは本人の自主性なので、と父親の顔を見せながら、宮島牧師はこう続けた。

「入管問題にどう関わってきたか。その理由はひと言ではいえません。もちろん聖書の御言葉はあります。キリスト者として、被収容者を励ますことはできるかもしれません。実際には、一度関わったら、助けを求められ続けるという現実もあるし、支援者同士のつながりもあります。その意味では、『入管コミュニティ』に入っている感じですね」。

そんな父親についてヨハナさんは「世論がずっと目を向けてこなかった問題に、キリスト者として取り組んできたことを尊敬します。お父さんはマタイによる福音書の『わたしの兄弟であるこの最も小さき者の1人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」(同25章40節)』という言葉を大切にしていて、その生き方をまっとうしていると思いました」と話す。


SNS駆使して若い世代へ


当初から、デモの様子をインスタグラムやツイッターでアップしてきたヨハナさん。SNSを駆使した訴えは、これまで関心が薄かった世代に入管問題を伝えている。

「本当は広くこの問題を伝えたいのですが、私としてはまず、同世代の若い人たちに知ってもらいたくて。インスタグラム、ツイッター、YouTube等、SNSは特に若い人が見ているので、リーチしやすいかな、と」。

自らも、SNSから広がったBlack Lives Matter(BLM=黒人の命も大切だ)の運動に影響を受けたというヨハナさんは、アクティビズムについてこう話す。

「日本では、若い人は政治について声をあげません。でも、アメリカで同世代の友人がBLMについてアクションを起こしているのを見て、かっこいいなと思って。そこにインスパイアされて始めたのが、入管問題へのアクションだったんです」。

アクティビズムはかっこいいこと。そんな感覚が広まれば、社会の入管問題への関心もきっと高まるに違いない。


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