与党は公務非正規労働を容認?  参院選2022はむねっと「政党アンケート」より




地方自治体で2020年度に始まった「会計年度任用職員」制度は、結果として公務労働に男女差別賃金の固定化をもたらした。地方公務員の女性比率は都道府県で32・6%ほどだが、会計年度任用職員は62・2万人の9割がパートタイムで8割が女性。最も多い一般事務の時給は約990円、年度ごとの契約で2年先の生活設計ができず、子育てもままならない。本来、臨時的業務のための単年度雇用だったはずが、恒常的業務まで担っている。税金で公共サービスを提供する職場で、こんな雇用がまかり通っているのだ。

こうした公務非正規の現状を伝え、声をあげてきた公務非正規女性全国ネットワーク(以下、はむねっと)は、参議院選挙を前に各政党に公開質問した。副代表の瀬山紀子さんに結果を報告してもらった。


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はむねっとは、2021年3月にスタートした公務非正規当事者や経験者を中心とするゆるやかなネットワーク。昨年と今年、公務非正規労働従事者を対象にウェブアンケートを行ない、現場の声や厳しい現状を発信してきた。

今回アンケートを送った全ての国政政党から回答があり、詳細は団体のHPで公開している。以下、その概要をお伝えする。


会計年度任用職員制度について

自民と公明は、かつての一般職非常勤職員制度に不備があり、本制度は必要があって導入されたという主旨の回答をした。維新も「制度は前進」と評価をしている。国民は、適切な運用が大切と回答した。

それに対して立憲、共産、社民、れいわは、制度自体に問題があると指摘。加えて立憲は「将来的にはフルタイム職員は常勤職員への移行を目指すとともに、パートタイム職員は給与や労働条件等について常勤職員と均等とする新たな短時間公務員制度の実現を目指す」と回答。共産党からも「恒常的業務は正規雇用を原則とするとともに、労働契約法の『5年無期転換ルール』を公務労働にも適用して雇用の安定化を進めるべき」との提案があった。


賃金水準の引き上げについて

公明、国民、NHK党を除く全ての党が「必要だと思う」と回答。「その他」とした公明、国民も、待遇改善は必要だとし、「問題だと思わない」と回答を寄せたNHK党を除いて、前向きの姿勢が見られた。


フルタイムとパートタイムの
待遇格差について

それまでフルタイムで働いていた人が、制度により労働時間を15分減らされ、退職金支給対象ではないパートタイムに移行させられた事例が少なくなかったため設けた質問。

自民、公明は、基本、「制度には問題がない」と回答。立憲、共産、国民、社民、れいわは「大きな待遇格差には問題がある」と回答した。維新は、自治体ごとに決めるべき事柄だとし、NHK党はやや問題ありと回答。


日本の公務員数の少なさと
非正規化について

自民と公明は「今後はさらにICTの活用や民間委託の推進等が必要」とし、人員増には触れなかった。他方、立憲、共産、社民、れいわは「現状には問題があり、正規公務員の人や枠を広げていくべき」と回答。維新は仕事の効率化と業務の最適化を主張。国民は、非正規については一時的なものであることを明確化し、入り口規制が必要と回答。NHK党はやや問題ありとした。


女性の経済的自立と
同一価値労働同一賃金について

NHK党を除き必要と回答。自民と公明からも、非正規雇用・正規雇用の不合理な待遇差の解消は必要だとする前向きな回答があった。


公務非正規の問題は、働き手の問題であると同時に、公共サービスの受け手である住民の生活安定に関わる重要なテーマだ。こうした考えを共有し合い、さらにこの先の公共のあり方について、選挙後も実情に沿った議論が重ねられることを願っている。

今回の回答結果を、ぜひ、投票の参考にして欲しい。


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