入管問題を考える 困窮する外国人ー誰もが医療を受けられる制度を

 社会保障というセーフティネットから振り落とされてしまう在留外国人のために、1997年から無料健康相談会や健康診断(健診)を続けているNPO法人「北関東医療相談会(AMIGOS)」。これまで同団体が健診を行なってきた非正規滞在者や仮放免者は、のべ3100人に上る。だが、健診で問題が見つかっても、健康保険に加入できない仮放免者に医療費100%という経済負担は大きく、病院に行くことを我慢する人は少なくない。

病院のことだけではない。今回、AMIGOSが日本で初めて実施した「仮放免者生活実態調査報告」は、彼・彼女らが置かれた厳しい生活状況を伝えている。出入国管理局(入管)が決めたルールによって、仮放免者はどこまで追い詰められるのか。AMIGOS事務局長の長澤正隆さんに話を聞いた。


(フリーライター 塚田恭子)






生活に困窮する仮放免者


「私たちは医者ではないけれど、健康保険に加入できない外国の人たちが気の毒で。手がつけられない状態になる前に病気を見つけ、治療の足がかりにできればと、この4半世紀、非正規滞在者や仮放免者の健康診断を行なってきました」と長澤さんは話す。AMIGOSが目指しているのは、誰もが健康に暮らせるために、在留資格の有無に関わらず、医療を受けられる環境をつくることだ。

だが、これまで繰り返し伝えてきた通り、仮放免者は働くことも、健康保険に加入することも、事前に入管の許可を得ない限り、県境をまたいで移動することもできない。

コロナ禍、3密を避けるため、入管はそれまでの方針から一転、仮放免を認めた。だが、外に出たとはいえ、就労を禁じられた仮放免者は見えない牢屋にいるのと変わらない。

「コロナ以降、仮放免者の生活はますます厳しくなっています。20年にかかった医療費は531万円、21年は1200万円と、支援にかけるお金の桁が上がっています。それまであった在留資格『特定活動』の延長が認められず、入管に収容され、仮放免になったものの就労できなくなった人や、コロナで仕事が減った人たちへの家賃援助も増えました」。

AMIGOSの事務所の一室には米、小麦、缶詰など食糧のほか、紙おむつや生理用品などがストックされている。医療相談会の会場で配布するほか、遠路の人たちには宅配便で発送もしている。ここまで献身するのは、長澤さんたちが仮放免者の生活困窮ぶりを知っているからだ。

生活状況がとても苦しい・苦しい人=89%。医療費負担がとても苦しい・苦しい人=87%、家賃滞納がある人=40%、借金のある人=66%、年収0円の人=70%…。

今年3月9日、長澤さんたちが記者会見で報告した仮放免者の生活実態は、多くのメディアだけでなく国会でも取り上げられ、追いつめられた彼・彼女らの姿を可視化した。


診療費を300%請求


多くの仮放免者は施設内で体調を崩し、収容に耐えられない状況になった末、一時的に解放される。昨年から今年にかけて、AMIGOSでは複数の仮放免者の手術を支援しているし、手術を必要とする人は他にもいる。だが、保険のない仮放免者に200%、300%の診療報酬を請求する病院も多く、医療支援で最も腐心するのは協力病院を探すことだという。なぜ病院は仮放免者にこうした対応をするのか。この問いに長澤さんはこう答える。

「保険がない=自由診療だから、病院が自由に請求できるというのでしょう。でも、相手は仮放免者です。彼・彼女らに300%の診療費を請求するのは診療拒否と一緒です。最も困窮している人たちにこういう態度を取る病院には、もちろん診療を依頼しません。私たちは、無料低額診療(無低)事業をしている病院に相談しています」。

無低とは、生計困難者に医療機関が無料、または低額で診療を行なう事業を指す。手術や治療費を抑えてもらえるよう、長澤さんは無低の病院と話し合いを重ねるという。

7月に労作性狭心症の手術をした仮放免中の南アジア出身のLさんがAMIGOSの支援で無料健診を受けたのは、6年ほど前に遡る。

「心臓が痛くなったのは6〜7年前です。自費で受けたら1万円以上はかかってしまう健診を無料で受けられると友だちから聞いて、(遠方の)宇都宮まで行きました」。

心臓に問題があるとわかったLさんのために、長澤さんは彼の家の近隣で受け入れ病院を探した。Lさんは2年間通院し、服薬を続けたが、冬場は歩くだけでも痛みで動けなくなるほど病状が悪化。長澤さんは担当者に相談し、交渉を重ね、無低で診療費の3割をAMIGOSが負担することで7月に手術が行なわれた


自助共助では解決できない


「もし手術をしなかったら、この冬を乗り越えられたかどうか…」。術後2カ月半、症状の落ち着いたLさんはそう話す。

就労が認められない=収入がない仮放免者の生活をどう支えるか。長澤さんは「私のガリラヤ(イエスが苦境にある人々を救うため赴いた辺境の地)」と語る北関東を、東奔西走しながら支援を続けてきた。今、コロナ禍に加え、物価上昇のしわ寄せが困窮者を直撃している。病院にとっても、医療費が払えない人が増えることは負担となる。仮放免者の医療と生活の問題は、自助共助で解決できる限界を超えている。

なぜ入管は時代に即さないルールによって、外国の人たちを無権利状態に置き、窮地に追い込むのか。入管が仮放免者にやっていることは、国際人権規約に違反している。

AMIGOSではそのことを国連に訴えるため、準備を進めている。



ながさわ まさたか さん

1954年北海道出身。特定非営利活動法人 北関東医療相談会(AMIGOS)の事務局長。1997年から医療支援を中心に、仮放免者をはじめ困窮する外国人へ支援を行なっている。2006年より、カトリックさいたま教区終身助祭。AMIGOSは2017年に東京弁護士会人権賞を受賞。長澤さんの活動は今年7月、NHK ETV『こころの時代』で紹介された。

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