守られぬ患者の安全ー聖路加国際病院で牧師が加害

(写真はイメージ)




 聖路加国際病院(東京都中央区)でスピリチュアルケアを担当する柴田実牧師(日本基督教団所属神奈川教区・日本スピリチュアルケア学会)から性被害に遭った女性が加害者と聖路加国際大学に対し慰謝料などを求め東京地方裁判所に提訴。昨年12月23日、桃崎剛裁判長は牧師による性暴力に加え、病院側の使用者責任も認め、柴田牧師と病院側に対し、連帯して110万円を支払うよう命じた。

 聖路加国際病院のホームページには、スピリチュアルケアについて「チャプレンがじっくりと病気や怪我などの心の痛みや苦しみをお聞きして、患者さんとご家族の心・魂の支えとなるよう援助をします」と書かれている。しかし、女性は病院の一室で柴田牧師(チャプレン=施設で働く聖職者)との面談中、性被害に遭ったのだ。

提訴への思い

 女性は「まさか聖路加(国際病院)でそんなことが起こるわけがない」と被害を信じてもらえなかったことを振り返り、「どうしてこんなことが起こってしまったんだろうとか、自分でも信じられない時期が続きました。病院が患者の安全を守ってくれることは一切なかった」と話す。

 2017年5月8日、被害に遭った女性はすぐに知人の弁護士や性暴力救援センター「SARC東京」に相談。しかし、再び被害に遭ったたため警察に被害届を提出した。牧師は2018年9月に強制わいせつ容疑で書類送検されたが、「暴行脅迫要件を満たさない」と不起訴処分になった。そこで2020年11月、東京地裁に民事訴訟を提起したのだ。

 「私が被害を公にすると言うと、柴田牧師は『治療ができなくなる』と脅しました。病院の設けた第三者委員会は、私に聴取することもなく『被害はなかった』と結論を出しました。もう、民事訴訟しかなかったのです」。

判決後の対応

 東京地裁の判決を受け、病院を運営する聖路加国際大学は、賠償金は支払うが原告への謝罪や再発防止策の協議は行なわない旨、担当弁護士を通じファックスで女性に通知してきた。使用者責任を誠実に果たす姿勢は皆無である。

 聖路加国際病院にチャプレンを派遣している日本聖公会は、ハラスメントの訴えを長期間放置したことへの謝罪文をホームページで公開。しかし病院の使用者責任について謝罪を進言するなどの措置は行なわなかった。

 また、柴田牧師の所属する日本基督教団も同様にホームページで謝罪文を掲載。神奈川教区でハラスメントの調査を終え、戒規の審議を行なう予定だという。

原告代理人の本田正男弁護士はいう。

「病院には、患者からのハラスメントや学生の被害についての窓口はあっても医療者から患者へのハラスメントの相談窓口はありません。また、宗教の自治は尊重されますが、これだけのひどい被害や差別に目をつぶってきたわけですから、社会的規範から外れない健全な組織になっていくべきです」。

 女性は「A牧師を支え守る会」をはじめ、SNSで誹謗中傷される等、二次被害にも遭っている。今後は「不法行為を隠蔽したり、組織内でかばいあう体質を病院にも教団にも改善してほしい。被害者の人権が守られるように、徹底した検証や調査と、責任の明確化を求めたい。医療機関や宗教界における性暴力とその二次被害について、報道機関とも協力して実態調査を行ない、当事者の立場に立って改善策を提示していきたい」という。

 権威ある職業や弱者の味方が加害者の場合、性被害の多くがもみ消されてきた。勇気を出し告発した人を守る法律はもちろん必要だ。そして、病院や学校、市民団体、労働組合、支援団体…等々、どんなに「良きこと」を成す組織であっても、差別や性暴力を許さないシステムが機能しなければ、その先に望む社会など作れるはずもない。



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