エリザベスさんにビザ(在留特別許可)を!




エリザベス・アルオリオ・オブエザさん。入管問題に関わっている人なら、面識はなくても、その名前を聞いたことはあるかもしれない。

1991年に来日したエリザベスさんは、彼女自身が仮放免という不自由な立場にありながら、入管収容施設に足を運び、被収容者を応援し続ける支援者だ。その活動は、これまでテレビや新聞などでも報道されている。

with Elizabeth(エリザベスとともに)」は現在、難民申請中の彼女に1日も早く人道配慮による「在留特別許可」(在特)を出してもらえるようにと立ち上がった市民グループ。メンバーの1人で翻訳家の柳沢由実子さんはこう話す。

「エリザベス自身、2度、収容されています。中の状況を知っている彼女は、被収容者が求めていることも、苦境にいる人々の気持ちも理解しています。人を励ますことと祈ること。今、エリザベスの生活をなしているのは、この2つだけです。仮放免の今は、働くことも、健康保険に入ることも、事前の許可なく県境を越えることもできません。32年間、日本で過ごしてきた彼女の生存権を国に認めてもらい、これ以上、彼女の人生の時間が無駄にならないように、署名活動を始めました」。

日本人が知らないFGMの実態

ナイジェリア出身のエリザベスさんはアフリカ・中東諸国に残る伝統的慣習、女性性器切除(FGM)から逃れるため、14歳で家を離れた。FGMの影響で9回流産していた母親は、一人っ子の彼女を守ろうとしたが、慣習の根強い地域では、拒否した女性を探し出して、FGMを強要する。エリザベスさんは国内を転々とした末、24歳の時に来日した。

FGMはどんな行為か、女性の心身をどれほど抑圧しているか。日本では、FGM自体を知る人が少ない。また周知の通り、日本の難民認定率は他国と比べて低い。エリザベスさんの代理人の指宿昭一弁護士は、日本の現状ではFGMを理由にした難民認定は難しいとの判断から、再審情願によって在特を得られるよう注力していると話す。

「エリザベスは難民として認められるべき人です。それがだめでも、入管は日本に定着している彼女に在特を認めるべきでしょう。その人が日本にいるべきか、世論をとても気にしている入管に、彼女は日本に必要な人だと示す手段が、署名活動なんです」。

指宿弁護士同様、入管問題に取り組む駒井弁護士も、エリザベスさんについてこう話す。

「収容生活に絶望している被収容者に面会し、勇気づけるだけではありません。外に出ても何もできず、落ち込んでいる仮放免者や居場所のない人に自分の家を提供するなど、彼女はいつも他者を気にかけています。日本の社会が優しさを失わないためにも、今、私たちがエリザベスのことを守らなければと思います」。

国際法に違反する入管法改悪

エリザベスさんは現在、2度目の難民認定を申請している。帰国のリスクはFGMの問題だけではない。彼女は半世紀以上前にナイジェリアからの分離・独立運動を起こし、200万人以上の犠牲者を生んだ同国南東部ビアフラ出身だ。

来日後、彼女はビアフラ先住民のリーダーの1人として、ナイジェリア政府の人権侵害に抗議活動を続けている。日本人には遠い出来事かもしれないが、ビアフラ解放運動の活動家は実際、今も国内で殺害されている。

3月7日、政府は2年前に廃案になった法案の骨格をほぼそのまま維持した入管法改悪案を閣議決定し、通常国会での成立を目指している。難民認定の申請を原則2回までに制限し、難民申請中の人を強制送還するこの法案は、明らかに国際法に違反している。加えて新たに設ける送還忌避罪では、該当者に懲役や罰金という刑事罰まで科されることになる。

「私は平和がほしいだけ。もし入管法改悪が成立しても、帰国せず、刑務所に行きます」とエリザベスさんはいう。

国籍を問わず、人のために活動してきたエリザベスさんが穏やかに暮らせるよう、彼女を応援する時が来ている。


(取材・文/塚田 恭子)

2023年4月25日号

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