女性会議60周年記念シンポジウム 軍拡を止めるために何ができるか



6月24日、女性会議60周年記念シンポジウムが全水道会館(東京)で開かれ、会場とオンラインで約150人が参加。『軍事化と女性の人権』と題して、弁護士の中野麻美さんが基調講演を行なった。

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中野さんは冒頭、日本が報道の自由度ランキング71位(2022年)であることを示し、その情報隠蔽体質こそ女性ジャーナリストへの性暴力を増長させている原因であり、報道の自由の再生を目指さなければならないと訴えた。

また、女たちの安保違憲訴訟の概要を説明し、安全保障の議論から女性を排除することによって平和を軍事におきかえ、女性の尊厳と平和的生存権を否定していること、騙し討ちで法律(安保法制)が策定されていった過程で、ジェンダー監査(ジェンダーの視点で政策等をチェックすること)がされなかったことを指摘した。

司法の場で、軍事化していく国の動きを「違法だ」と訴えても、「保護は必要なく、受忍すべき範囲」と一蹴。司法が職権化し、当事者主義を認めず「俺たちが決めてやる」という態度であること、「審議を打ち切るのも裁判所の裁量だ」といった態度であることに対し、「同じ職業の者(法律家)として恥ずかしい」と語った。

コロナ禍では、女性たちが複合的な影響によって不均衡な被害を受けていることも指摘。パンデミックのみならず、阪神淡路大震災、東日本大震災と原発事故でも女性は失業し、貧困に陥り、生存に不可欠な生活基盤へのアクセスが途絶えた。中野さんはそれらを「社会の課題」として捉える必要性を語った。相談会に訪れる女性は、「朝まで眠れる」「お腹がすいたらご飯が食べられる」ということすら、ほとんど満たされていないという。

そういった流れから、中野さんは現在のことを「新しい戦前」とは捉えておらず、「銃を札束に変えただけだ」と力を込め、ホモソーシャルの秩序と壁の連続性の中にあるとも語った。

そして、戦争を準備する根底にあるものは、家父長制であり、家父長制こそが差別と暴力の基盤であることを押さえておきたいと話した。政府が憲法24条を変えようとする時には全ての女性の人権が侵され、軍事化が進められる時には、家父長制と女性への暴力が強化されるのだ、と説明。軍縮のためには、経済格差、搾取と貧困をなくし、人権を染み渡らせるしかない。ジェンダー主流化(政策全般にかかわる全ての領域、政策分野にジェンダーの視点を入れていくこと)が大事であると力を込めた。

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シンポジウムでは、海渡雄一弁護士が、経済安全保障推進法におけるセキュリティクリアランス制度、特定秘密保護法に触れ、秘密裏に軍拡が進むことや、中国を敵対視する流れへの危機感を語った。また防衛産業開発生産基盤強化法により、軍拡予算を増やしていくことに関心を持ってほしいと語りかけた。

杉浦ひとみ弁護士は、大学生になって初めて「男女格差」を実感したと告白。女性は力を発揮する場を与えられていないだけであり、立場を与えられればやれるのだと語った。また、平和を求め軍拡を許さない女たちの会のスカーフの取り組みも紹介し、「少しずつでも押し返していく」と意気込みを語った。

平和フォーラムの藤本泰成さんは「新しい戦前」の前に、戦前の総括をし、反省が必要だと語り、あらためて憲法9条を変えさせないこと、そのことに対する国民的コンセンサスを得ることに努力すると話した。

「最後に一言ずつ」とマイクを向けられた中野さんは、「控訴審で勝ちたい!」と締めくくった。安保違憲訴訟女の会の次回期日は9月8日13時半より、東京高等裁判所。ぜひ傍聴へ。

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翌25日は、女性会議全国事務局長会議が行なわれた。

前日のシンポジウムでの提起を受け、いかに平和憲法を活かし、命とくらし優先の政治に変えていく運動を多くの女性たちと進めていくかを討議した。女性議員を誕生させるだけではなく、一緒に地域や女性の持つ問題を学習し、要望を出し、政策として解決していく経験は、議員も組織も成長させるし、運動の中で若い人とつながることができることを共有。

また、一向に改善されない女性の働き方を変えていくには労組女性部をはじめとして、女性労働者との交流を行ない、具体的改善要求を市民・組合・自治体をつなぎながら実現していくことを目指す。 

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